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8.162023
伝説の三度栗
さて、久しぶりに栗の雑学的なお話でも。
以前、万葉集のお話で古代から栗は三つ毬に入っているものという認識があったという話をしましたが、今回は今年の大河ドラマの主人公「徳川家康」や今年生誕1250年の弘法大師こと「空海」、今期の朝ドラ主人公モデル植物学者の「牧野富太郎」も関わる「三度栗の伝説」のお話です。
通常和栗は6月から7月に開花し、9月から10月にかけて実が落ちます。品種によって早い遅いはありますが、実が落ち始めれば2週間程度でその木の実はすべて落果し、その年に実をつけることは基本的にはありません。基本的にと言ったのには、経験上、気候によっては狂い咲きで秋に花が咲き未熟果が着くことがある、というのが事実で最近もありました。ただし、あくまでもイレギュラーでエネルギーを使う狂い咲きはしてほしくないというのが本音です。
さて、本題の三度栗はその名の通り、一年に三回実をつけます。つけるらしいです。6月9月11月に花が咲くとか。真冬に栗拾いはあまりしたくないですね…。
静岡・新潟・福井・岡山・高知などにその三度栗の名とともに伝説が残ります。まぁ、偉人と言えば静岡ってあたりで家康、高知から京都周辺ってあたりで空海でしょって感じがしますがさておき、話の内容は大体同じです。
「お腹のすいた空海(家康)がやってきて何か食べるものはないかと子供や老婆に聞くと栗を分けてくれた。ありがたいと食べ感謝した空海(家康)がこの栗を1年で3回なるように祈り、残った栗を埋めると本当に1年に3回実のなる栗の木が生えてきた」という流れです。
少し面白いのは静岡県袋井市の伝説で、武田との負け戦のあと(三方ヶ原?)弁当の箸が無くて箸代わりに使った栗の折った枝を「もし自分が、天下をとったら三回実をつけろ。」と命じて地面に刺したら三度栗が生えた、と。「どうなってんの?家康」と言いたくなりますね。それにしても、三方ヶ原後の家康は小豆餅を食い逃げして老婆に追いかけられたり、おかゆをご馳走してくれた人に小粥さんと苗字をつけたり、箸忘れても弁当食べたり、腹減りすぎ忙しすぎですね。
そんな伝説の~伝説の~と言っている三度栗ですが、普通に苗木が売ってたりします。
https://www.hanahiroba.com/c/0000000100/0000000101/0000000117/0000008280/kuri-sandoguri01
しかもこれは毬が赤いタイプだそうで。
普通の毬のものもあるそうで、高知の三度栗については牧野富太郎博士が「植物一日一題」(ちくま学芸文庫)という本で触れていらっしゃるそうです。
実物見ていないのでネットの情報だよりなのですが、どうも和栗ではなく天津甘栗に代表される中国クリの一種のようで、和栗と違い夏から秋にかけて花を咲かせ続け、実をつけ続ける性質があるようです。作物というよりも観賞用という側面の強い栗のようですね。
おそらく、そういった性質の栗が自生していて、珍しいので偉人の神通力に由来させて伝説化した、というところなのでしょう。
お話しすると皆さん驚かれるのですが、普通に流通している栗の品種だけでも10種類以上あり、和栗だけでも栽培品種として200種類以上、世界4大栗といわれる和栗・中国栗・西洋栗・アメリカ栗全体で1,000種類以上あるとも言われています。変わった特徴をもつ栗としては、他に毬にトゲトゲのない「トゲなし栗」も有名でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
空海は東海村の虚空蔵尊に伝説ありますし、水戸には家康の孫の光圀公がいますから飯沼栗もいずれ伝説の栗と呼ばれる日が来るかも…まぁ、枝刺しただけで飯沼栗は出来ませんけどね。たまに栗畑から栗の木の枝切っていく人いますけど、やめてくださいね。家康公だから許されるんですからね、コンビニで箸貰い忘れても箸がわりにもしないように。